
診察案内
神経科 Neurology
神経科では主に脳と脊髄の疾患に対して診断、治療をおこなっています。脳に異常が生じると、痙攣したり、頭が傾いたり、同じ場所をぐるぐる歩き回ったり、ぼーっとして意識状態に変化が生じたりします。また、脊髄に異常が生じると、突然キャンと鳴いて痛がったり、よろよろと足がふらついたり、まったく足が動かなくなったりします。こうした患者さんに対し、様子を観察し、身体を触ることで、異常が「どこ」にあるのかを推測することが神経科診療の第一歩となります(部位診断)。次に異常の原因が「なに」かを調べますが、これにはMRI検査や脳脊髄液検査といった全身麻酔が必要な検査へと進まなくてはなりません。検査の前にはメリット、デメリットについてご説明いたしますので、ご不明な点についてはお気軽にご質問ください。
当院で診断・治療可能な疾患
胸腰部椎間板ヘルニア/頚部椎間板ヘルニア/環軸不安定症/後頭骨形成不全症候群/頭蓋頚椎移行部異常/脊髄空洞症/脊髄炎/脊髄梗塞/尾側頚部脊椎脊髄症(ウォブラー症候群)/脊髄腫瘍/脊椎腫瘍/椎間板脊椎炎/脊椎骨折/脊椎脱臼/脊髄くも膜憩室/変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)/変性性脊髄症/進行性脊髄軟化症/水和性髄核脱出/特発性無菌性化膿性肉芽腫/脊髄硬膜外動静脈瘻/脳腫瘍/脳梗塞/脳出血/脳炎/特発性振戦症候群(ホワイトシェイカーシンドローム)/顔面神経麻痺/前庭障害/ホルネル症候群/てんかん/水頭症/猫伝染性腹膜炎 など
当院で実施可能な手術
片側椎弓切除術/小範囲片側椎弓切除術/背側椎弓切除術/部分的側方椎体切除術/腹側減圧術(ベントラルスロット)/環軸腹側固定術/脊椎固定術/腫瘍脊椎骨亜全摘術/くも膜嚢胞切除術/脊髄腫瘍摘出術(硬膜外、硬膜内髄外、髄内)/広範囲片側椎弓切除術+硬膜切開術/SSシャント術/大後頭孔減圧術/脳腫瘍摘出術/VPシャント術 など
多く認められる神経疾患
椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間のクッション材である椎間板が脊髄を圧迫することで生じる疾患です。犬で多く認められ、主に首と腰に生じます。重症度(Grade)が低い時の症状としては頚部痛や腰痛が挙げられ、抱っこするとキャンとなく、頭をなでただけなのに悲鳴をあげる、段差を登ることが出来なくなった、頭を上げられず上目使いで見てくる、といった症状が認められます。重症度が高くなると麻痺が認められ、首のヘルニアでは四肢麻痺が、腰のヘルニアでは後肢の麻痺が生じます。歩けない患者さんは一般的に緊急性が高く、場合によっては全身麻酔下でのMRI検査に引き続き即手術となるケースもあります。当院では皮膚切開や骨切削が小さく、身体への負担の少ない手術を実施しています(背外側アプローチからの小範囲片側椎弓切除術など)。
環軸不安定症
首の1つ目の骨(環椎)と2つ目の骨(軸椎)が主に先天的な理由により緩みが生じ、脊髄を圧迫することで痛みや麻痺を生じる疾患です。若齢の小型犬に多く発生しますが、ときに高齢、中〜大型犬でも生じることがあるため注意が必要です。診断にはMRI検査だけでなくCT検査も必要となります。突然死のリスクがあるため基本的には手術が必要な疾患であり、当院ではチタン製インプラントと骨セメント(ポリメチルメタクリレート)による腹側固定術を実施しています。
てんかん
脳の異常により繰り返してんかん発作を生じる疾患です。てんかん発作としては、突然倒れて手足がピーンと伸びた後に口をガチガチ、手足をバタバタさせる強直間代性痙攣がわかりやすいですが、そうでないこともあります(ぼーっとして呼びかけに応じない、金縛りにあったように動かなくなる、意識の低下のみが認められる)。その「発作」はてんかん発作なのかどうか、つまり脳が原因なのか、その他の原因があるのかをまずは調べます。その後にMRI検査と脳脊髄液検査により脳に異常があるのか、ないのかを検査します。